めし

Mesi DVDで成瀬巳喜男監督作品「めし」(原作・林芙美子/監修・川端康成/脚色・井出俊郎 田中澄江)を観る。
木全公彦氏の解説によると、この未完の原作(原作者が心臓麻痺で急死のため)を、脚色の担当者は第一稿で、主人公である倦怠期の夫婦が別れる、という結末に仕上げたようなのだが、原作の連載元である朝日新聞から「離婚は困るという申し出があった。
製作会社の東宝でもやっぱりラストでは夫婦仲直りしなくちゃ興行価値がないという」(「『妻として女として』のシナリオ・ライターとして」、「シナリオ」1961年5月号所収)という経緯があり、今の形になったらしい。ものをつくるということは、多かれ少なかれそうした軋轢が常につきまとうものだ。
けれど、おそらくないものねだりで、やっぱり夫婦が「別れる」バージョンを観てみたかった、と私は思った。

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西陣心中

Nisijin この映画を初めて観たのは、今からおよそ20年前、大学生の頃、深夜のテレビでだった。
その虚無感漂う、独特な不気味さにゾワッと鳥肌が立ち、以来、ずっと気に掛かっていたのだが、題名すらわからない。かろうじてわかるのは、おおよそのあらすじと、シーンの断片的な印象のみで、それを手がかりに、映画好きの友人に尋ねてみたのだが「知らないなあ」と、つれない返事。なので、すっかり諦めていたのだけれど、ネット時代になって、ひょんなことから、判明した。
『西陣心中』は、高林陽一監督による1977年の、いわゆるATG映画。ビデオ化はされているものの入手は困難であるらしい。2008年1月現在、DVD化はされていない模様。私はこのビデオを渋谷のツタヤで借りて観た。
主演の島村佳江の無表情なコワさや、成田三樹夫のイヤラシさは、記憶とだいたい合致したのだが、印象的なシーンのいくつか、とくにラストシーンは、思っていたのとずいぶん違う。かくも人の記憶というのはいい加減なものか。おそらく初恋の女の子に今、再会したら、こんな感覚を味わうのだろう。しかしそうした「初恋の思い出」的ハンデを措くとしても、この映画にとって、この見せ方が最上であったとは思えない。基本的に好きな映画だからこそ、もっと大傑作になりえたと、脳内で、私だけの「西陣心中」を勝手に上映させてもらう。

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