スワンサイダー
スーパーで見つけ、そのレトロな瓶の形やラベルのデザインが、あんまり可愛かったんで、購入。
飲んでみた。味もよし。
ただ、飲み終えた後、空き瓶を捨てるのが忍びない。
POP広告もいい感じ。
友桝飲料
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スーパーで見つけ、そのレトロな瓶の形やラベルのデザインが、あんまり可愛かったんで、購入。
飲んでみた。味もよし。
ただ、飲み終えた後、空き瓶を捨てるのが忍びない。
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友桝飲料
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仕事をもらえるのは、ありがたいことだけれど、「できません」とすでに何度も伝えているはずなのだ。
それは私のスケジュールだとか、能力の問題ではなくて、発注元のコンピューターのシステムにバグがあるらしく、データの受け渡しが正常に行われないためで、そのことを、もう一週間も前から再三にわたり、担当者にメールで知らせているのだ。
なのに、今日、新たに追加の仕事が舞い込んだ。ギャラのアップを提示して。
だからあ!
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20代の半ばまでは会社の社員証が顔写真付身分証明書となっていた。会社を辞めてからは運転免許証がその代わりをしていたが、ワケあって運転免許が失効してしまい、何かと不自由していた。
なので、このたび、住民基本台帳カードなるものを作成。10年間有効らしい。
10年…。
その頃の人相は、身分証明書の写真とずいぶん変わっていることだろう。住所は、おそらく変わっていない。家のローンもあるし。そのローンは順調に返済できているのだろうか? そもそも私は生きているのか?
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いつだったかテレビで、政治家が、女性アイドルに「身長(cm)-100=標準体重(kg)」みたいなことを言い、これに対し、アイドルが「えー?!それは太りすぎぃ」とか反発してるのを見た。
中学生の時、クラスの女子から「(身長(cm)-100)×0.9=標準体重(kg)」という説を聞いたことがある。
で、ネットで調べてみたら、こんな計算式を見つけた。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
身長の自乗に22をかけるというのだが、計算してみると、「クラスの女子」説よりは、やや甘めの数値が出る。
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古本屋で、女流作家Sの本をまとめ買いしたら、そのうち一冊に、前の持ち主のものと思われる香水が強烈に染みついていて、ページを開くのもためらわれるほど。
その匂いが、やがて私の中で、女流作家Sの匂いとなる。
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地表付近の月は、やたらデカく見えるけれども、これは周りに民家や林などの比較対象物があるために、そう見えるだけなのだ、と小学生のとき教わった気がする。
だけど、天頂付近の月を、ビルや民家の屋根や木の枝をナメて見あげても、やっぱり小さく見えるので、納得いかない。それに、比較対象物のない地平線や、水平線付近の月も、やっぱりデカいんじゃないだろうか? さらに屁理屈を言えば、たとえば朝方か夕方の、比較対象物が確認できる明るさの空で、月の近くに飛行機が通りかかったら、月は急に膨張し、飛行機が去ったら、また急に収縮しなければいけないのじゃないの?
大気がレンズの役目をしてどうこう、という話も聞いたことがあるが、ほんとのとこは、どうなんだろう?
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スーパーで万引きしそうになってしまった。
夕飯のおかずを買い物かごに入れ、「そうだ。プリンターの紙がもうないんだった」とA4のコピー用紙を手に取ったのだが、かごに入れたら玉子をつぶしてしまうので、腋にはさんでレジに並んだ。で、書きかけの新作のことなどをあれこれ考えているうちに順番が来て、かごの中身を精算したのだけど、腋の紙を忘れてそのままレジを通過しそうになってしまった。
「あっ!これも」とすぐに追加で精算したが、もしもあのまま気がつかなければ、店を出たとき「ちょっと」と店の人に肩を叩かれていたかも知れない。
ま、その前に、買ったものを袋に詰め替えるときに気がつくか。
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我が家には、もう長いこと炬燵がない。外出したとき、消し忘れていたのではないか、と心配で仕方がないから。石油ストーブなんてもってのほかで、絶対火事になると思ってしまう。
なので長年、冬場もエアコンだけで過ごしてきたのだが、冷え性なので足が寒い。
それで、ネット通販でホットカーペットを購入することにした。
「クチコミ」欄なるものに、セレブな購入者が、「猫用に買いました」と書いている。人間の私としては屈辱的だが、安さの魅力に抗えず、購入した。届いてみれば、安いだけあって、たしかにカーペットがチャチなのだけど、ちゃんと暖かくはなるし、まあ、いいか。
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子供の頃、大人になったら何になりたいかと問われれば、「エーセー屋さん」と答えていた。
エーセー屋さんとは、バキュームカーで、便所の汲み取りをする人のこと。つまり衛生局の職員だ。親は「夢がない」とうなだれた。
私の子供の頃は、水洗便所はまだ少なくて、汲み取り式が主流だった。バキュームカーが来ると、子供にとってはちょっとしたイベントで、私は近所の子らと「臭い、臭い」と言いながら、バキュームカーを追いかけてまわったものだった。そして、エーセー屋さんの仕事を眺めたのだが、これが子供にとって唯一、大人の「労働」らしい労働に触れる機会だった。
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街路樹のプラタナス。
この丸い実を見るといつも、小さな子の着るコートの首から胸に垂れるボンボンや、私がそんな子供の頃に暮らしていた平家建ての、居間と台所の境にかかっていた毛糸のボンボン暖簾を思い出す。
その台所で小火がでたのは、いつのことだったか。
母が天ぷら油を火にかけたまま長電話していたのだった。幸い大事には至らなかったが、消防車までやってきて、焼け跡に集まる近所の人々(靴のまま家にあがった)の中で、母は憔悴しきっていた。
しかし私は、なんだか一躍時の人になったようで、妙に誇らしく彼らに目撃談を語った。今考えると、ちょっとドラマチックに脚色してたかもしれない。
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最近になってまた、アドバルーンを見かけるようになった。
子供の頃は、意味もわからず、アドバ・ルーンと区切って呼んでいた。(ロールスロイスも、ロール・スロイス。なんとなく美味しそうだと思う)
アドバルーンのヒモの部分に掴まって、どこまでも上昇していく自分の姿を思い描き、怖ろしいと思ったものだった。
私は昭和43年生まれ。子供のとき、チンドン屋はすでにレトロの匂いがしていた。日曜日になると、セスナ機が住宅地を低空飛行して、家具屋かなんかの名を連呼する女性の声を振りまいていたのも思い出される。
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近所に二軒の床屋がほとんど並んであって、一方の料金が、もう一方の倍なのだ。
私は当然、安い床屋に行くわけだけれど、その店の理容師のあんちゃんが煙草臭いのは、私も愛煙家だから辛抱するものの、妙に馴れ馴れしく、しかもタメ口なのが、我慢ならない。
倍のお金を払って隣の床屋に行く気にもなれないし、だいたいそこの店にしたって、タメ口でない保証はないのだし…。
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学生時代、読み終えた本は即刻、古本屋に売っていた。本を売って得た金は、たいていその日の夕飯に消えた。
授業で使用した学術書はもとより、趣味で買った小説なども。何故? と問われれば、アパートの狭い部屋が本で埋め尽くされるのがいやだから、と答えた。ならば図書館を利用すればいい、との反論には、一瞬でも所有する喜びを買っているのだ、などと屁理屈をこねた。
それもまったくの嘘ではないのだが、ほんとうのところ、借りた物をどうかしてしまったらどうしよう、という不安があった。「どうか」というのは、たとえば醤油のシミをつけてしまったり、どこかになくしてしまったり…。
加害妄想的な傾向が、私にはあるようだ。
今では、普通に図書館を利用するが、それでも、借りたその日から、返却期日が気になってしょうがない。
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群馬出身者にとって、カルタといえば「上毛カルタ」。
上毛カルタを知らぬ群馬県人は一人もいない。ほんとうに、一人も。
子供の頃、私は、これが全国でやられているもんだと思い込んでいた。全国で、その土地にちなんだカルタが、というのではない。日本じゅうで、上毛カルタがやられていると思い込んでいたのだ。
「群馬のことばっかりで、よく、文句が出ないもんだなあ」と。
テレビの天気予報なんか、関東地方の天気しか伝えないから、北海道や九州の人は、さぞかし不便だろうなと同情していた。
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ミラーボールが苦手。
ボールに反射したキラキラの模様が、暗い室内の壁をぐるぐる這い回ると、こちらの目が回ってしまう。
たぶん三半規管が弱いのだと思う。
遊園地のコーヒーカップなんてもってのほかだし、振り子状態に大きく行ったり来たりするアトラクションなんかは、吐くのではないか、そしたら他の乗客に吐瀉物がかかってしまい、大騒ぎになるのではないかと、その想像の方が恐ろしくて、ますます気分が悪くなる。
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学生時代に、もっとしっかり勉強しとくんだった、と後悔することがしばしばある。だけど、よく思い出してみれば、学生時代ってなんだかんだと結構忙しく、まあ、私のいた経済学部なんかは、「猫より暇」とか言われてたのだけど、猫は猫なりに、やっぱりやるべきことがあるのだし、だいたい、しっかり勉強してたら、ほんとに後悔せずに済んだのだろうか?
いくらしっかり勉強しても、理想とする自分の姿というのは、いつも現実より少し高いところにあって、永遠に手の届かぬものではないか、届かないから理想なのだし。
結局は、ないものねだりなのだ、と思っても、しかし後悔の念が消えたわけではない。
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マンションが雁行タイプで、つまり、建物がジグザグに設計されていて、玄関からエレベーターまで行くのに、いくつかの角を曲がることになる。
早朝、私がゴミ出しに行くと、曲がり角から不意に新聞配達員が顔を出した。
ということは、相手からしてもやはり、ジャージ姿の男がゴミ袋を提げて突然現れたことになるはずで、お互いに思わずのけ反り、「おおっ!」と声をあげてしまったのは、仕方がない。
が、その後、すれ違いざまに、相手がチッと舌打ちした。
「ちょっと待て。今のはどういう意味の舌打ちだ?」
私は彼の腕を掴み、問いただしたい気持ちになったけれど、もちろん、朝っぱらからそんなことはしなかった。
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カタログ通販で買物しようと、妻が申込書にボールペンで記入していた。
「そんなの、いまどき、ネットから注文できるでしょうが」
そう言って、私が代行してやる。
しかし、サイトのつくりがひどくわかりにくく、本来適用されるはずの割引が適用されぬ形で注文が完了してしまった。
そのくらい、諦めても良かったのだが、しかしやっぱり納得いかず、通販会社に電話したら、オペレーターが大儀そうに対処のし方を教えてくれ、私は再びパソコンに向かい、教えられた通りにやろうとしたのだけど、うまくいかない。
もう一度しつこく電話した。
今度はべつのオペレーターが出て、すると、さっき教えられたことがウソだったと判明。
ウソというか、間違えというか、単によくわかっていなかったのだろうけれど、私のイライラはそこで頂点に達し、「もう、いいッ。めんどくさい!」と注文じたいをキャンセル。
そんなわけで、妻はいまだ買物できていない。
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クリスマスの時期になると、街角のみならず、庭の木をイルミネーションで飾っている家をよく見かける。
私は大学が札幌だったので、大通公園のホワイトイルミネーションを見に行ったことがある。観光客ですごい混雑だった。
カップルでホワイトイルミネーションを見ると別れる、というジンクスがあると、当時、バイトで講師をしていた塾の生徒から教えてもらった。
大勢の足で踏み固められた雪は、つるつる滑り、男が尻餅なんかつくと、ただでさえ、寒いのと行列が進まないのとでイライラしていた女が、「もうっ、何やってんのよ!」ということになり、男は男で、尻は痛いし、冷たいしで、「そういう言い方、しなくてもいいだろ?」
「早く立ちなさいよ」
「手、貸せよ」
「あー、もう、みっともない」
「みっともないって、なんだよ?」
「みっともないは、みっともないよ!」
とかなんとかのやりとりの末、2人は別れることになるのだろう、と私は邪推するのだが、ほんとのところは、よく知らない。
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昨年だったか、一昨年だったか、いずれにしても、夏の話である。夕方、蝉が部屋に入り込み、大騒ぎになった。
ベランダの洗濯物を取り込んだら、くっついていてきたのだ。
室内で見る蝉の存在感は、ものすごい。しかも行動が読めなくて、壁や家具や天井にバンバン体当たりするから、恐ろしい。私たち夫婦は一旦、廊下に避難して居間のドアを閉めた。
「なんとかしろ!」と私が命じると、妻が軽蔑のまなざしで見返したので、仕方なく私が箒を手に、そうっと居間に戻った。
と、背後から「これ、これ」と声がして、振り向くと、妻が殺虫剤を持って立っている。蝉に殺虫剤なんて、そんな残酷な話は聞いたことがない。
ならば、と今度は、浴室から洗面器を持ってきた。蝉をを床に封じ込める作戦らしい。姑息とはこのことだ。仮にその作戦が首尾よくいったとして、誰が再びそれを開くのか?
結局、長い格闘の末、カーテンにとまっているのを揺すぶって、ようやく蝉を窓の外に追いやった。完全に日が暮れていた。
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人一倍、集中力が、ない。
本を読んでいても、映画や芝居を観ていても、気がつくと、まったく関係ないべつのことを考えている。
で、客席で、どっと笑いが起こり、え? 何、何? という状態になることも、しばしば。
そんなとき、「ねぇ、ねぇ、今、なんて言ったの?」と、隣の席の人に説明を求めているおばちゃんを見かけると、あ、仲間だ、と思ってしまう。
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寝起きに、うっかり靴下を履いたまま、風呂に入ろうとしたことがある。
湯舟に入る前に気づいて、あわてて脱いだのだが、このあたりが凡人の限界か。そのまま何食わぬ顔で入浴を済ませてしまう図太さが欲しいとも思うが、しかしそうなると、この一瞬の違和感も体験しなかったことになる。
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首の付け根に何やら違和感。
シャツの生地の縫い目がよじれて団子になり、当たっているのかと思ったが、手を差し込むと、指先に触れた固いモノが、脇腹から背中へガサガサ這った。
ゾッとして身をよじり、シャツを、肌から引きはがすように引っ張ってバフバフさせる。
と、腋の下から二の腕にかけて、くすぐるような感覚が移動した。あわてて袖を捲ると、違和感の主が、一匹、蠢いている。名も知れぬ、小豆大の黒い虫。
即座に床にはたき落として、「違和感」を踏みつけた。
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歯が痛みだすと、急に町中に歯医者が増える。畳がすり切れると、やたらと畳屋が看板を出す。
要は見る者が、今、何を必要としているかということだが、不思議なことに、公衆便所だけは、求めれば求めるほど姿を消す。
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道を歩いていたら、まるで吊り橋を渡っているように、足下がぐらりと沈んだ。
地震か、とひやりとしたが、誰も何も反応しない。
どうやら、歩きながら、軽く貧血を起こしたらしい。
三歩ほど異次元をさまよい、ふんわり戻ってきて、その場にしゃがみ込んだ。
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美味しそうなインド料理屋があったのだが、昼食には蕎麦を食うと朝から決めていたので、香辛料の香り漂う店の前を素通り。食堂に着き、店のおばちゃんに、天ぷら蕎麦を注文すると、ガスが故障していて、蕎麦が茹でられないという。
「カレーなら、すぐできますけど」
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私の演奏するライブ音源。
まだ小学校に上がる前の、ピアノの発表会の模様を収めたレコードだ。むろん自主製作。流通はしていない。
私はラクダ色の半ズボンに白のタイツを穿いていた。当時の写真を後で見ての記憶だと思う。
しかしステージに上がる前のことは、ダイレクトに憶えている。
私はピアノの先生に付き添われて下手(しもて)の舞台袖にいた。ステージでは、何人か、女の子の演奏が続いた。司会者が、「いよいよ次は男性のピアニストです」と私を紹介。「男性」という言い方に反応してか、それとも「ピアニスト」というのが面白かったのか、観客がどっと笑った。先生も笑い声を上げた。
私はそのとき、すでにステージに向かい歩き出していたのだが、あわてて舞台袖に踵を返した。なんで笑いが起きているのかわからないまま、とにかく「間違えた」と直感して。
「いいのよ、いいのよ」と先生が私を回れ右させ、再びステージに押し出した。
私は黄色いバイエル程度の曲を2曲、弾いた。憮然として。
レコードを聴くと、それでも教えられた通り律儀にスタッカートなんかしてるのが、自分で言うのもなんだけれど、かわいらしい。意外とテンポもキープしている。が、いかんせんミスタッチが多く、聴き手の私が、ひやひやしてしまう。
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今まで使用していた、昔ながらの、目盛りを針が指すタイプの体重計が壊れてしまったので、体脂肪計付体重計を購入。
「壊れてしまった」という認識が、私にはまったくなかったのだが、「おかしい」と妻が指摘した。「実際の体重より4~5キロ多く示す」と。
希望通りの体重を示さないからといって、体重計のせいにすべきでない。
私がそう諭すと、希望ではなく、健康診断で計ったのだという。健康診断は、前日。たった一日で、そんな急に太るわけがない。
そういうわけで買ってきた新しい体重計にのる。自分が急に痩せた気がする。
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書斎を整理していたら、昔、自分の書いたボツ原稿がたくさん出てきて、ざっと目を通したところ、なるほど大半はクズであるけれど、それでもところどころ、若い感性のキラリと光る部分があって、自己愛もあり、無下に廃棄できない。
当時、マッキントッシュを使っていて、データをウインドウズ用に変換しないまま、FDはもうどこかへやってしまった。せめて「キラリ」の部分だけでも入力し直してから、ボツ原稿を捨てることにする。思えば、私のデビュー作も、こんなふうにして生まれたのだから、まるっきり無意味でもないだろう、と思う。
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新しい戯曲の設定を思いついたときはいつも、すごく面白そう! と思う。
勘違いであろうと何だろうと、作者が自分で面白いと思えないものなど、最後まで書き通せるハズがない。
最初の一行を書き出すとき、ストーリーなど、決まっていない。いいのだ、それで。構想通りに書けたためしはないのだし、そんなデキレースみたいな作品を書いたところでしょうがない。
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近所の古本屋が閉店。
古本屋といっても扱っているのは主に中古のゲームソフトで、ゲームをやる習慣のない私の生活には、さして影響はないのだが、それでも少しは、本やCDやビデオなんかも置いてあって、私には密かに狙っているビデオがあった。
郊外の住宅街にあるその店の客層からして、そうそう捌ける代物ではないと踏んで、投げ売りされるのを待っていたのだ。けれど投げ売りはされぬまま、今、店はもぬけの殻である。私がビデオを買ってさえいれば、こんなことにはならなかったのに…、とは、まったく思わないが。
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マンションの管理会社から依頼を受けた、水まわりの工事と偽って、悪徳リフォーム業者がやってきた。ご丁寧に作業服姿で、もっともらしく、胸に「社員証」なんか下げているが、会社名は読み取れない。
男はユニットバスの耐用年数の話なんかはじめ、我が家の風呂の型番を教えろと言うから、
「要するにセールスだろ?」と私が言った。
「なんですか?」
「水まわりの工事だって言ったじゃないか。なぜ嘘をつく?」
「水まわりの工事ですよ?」
「風呂のセールスじゃないか」
「だから、そういう意味で言ったんですけど?」
今、キャンペーン中で、この近所で風呂の購入者を募っている。購入希望者は既に多数いる。(「たとえば、誰?」「プライバシーに関することなので教えられませんよ」)まとめ買いすれば安く交換できる。お宅も、ひとつ、のらないか? と、男は言うのだった。
「いらねえよ」
「風呂の型番、天井、開けたとこに書いてあるはずなんで。最終的に買う買わないは、お客さんの判断に任せますから」
「あたりまえだろ」
「壊れてからだと、水漏れして、下の階の人に迷惑かかっちゃうんで」
「あんたに迷惑かかるわけじゃないだろうが! だいたい、あんた、どこの会社だよ?」
「都内の…」
「会社名だよ。名刺くれよ」
「その前に風呂の型番、教えてくださいよ。」
「名刺、ないのかよ」
「ありますよ」
「じゃ、くれって」
「風呂の型番教えてくれたら、あげますよ」
いい加減、頭にきて追い返したら、その男、エレベーター脇に唾を吐いていきやがった。
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郵便物を取りに下りると、不在通知が入っていた。
ずっと部屋にいたのに、と思いつつも郵便局に電話して、時間指定で再配達を依頼する。荷物を待ちながら、部屋で仕事の続き。気づいたら、指定の時間を過ぎていた。
まさかねぇ、と思いつつ、もう一度、郵便受けを覗きに行ったら、やっぱり、また不在通知が!
このときすでに、郵便局の電話受付時間は終わっていた。仕方がないから、自転車で片道約30分、自ら郵便局へ荷物を取りに行く。着払いの料金620円。
インターホンが故障してるのか? と、部屋に妻を待機させ、エントランスで呼び出しボタン押してみたら、ちゃんと妻の声が出た。
たまたま、配達員が押したときだけ、2回とも鳴らなかったのか? それとも2回とも私が気づかなかったのか?
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かつて何度か禁煙しようとは思ったが、煙草とコーヒーは、もう完全に中毒だから、諦めた。
昔、煙草はオトナの(主に男の)アイテムとして市民権を得ていて、小学校で職員室に呼び出されると、部屋じゅう白い煙が立ちこめていて辟易した覚えがある。今はたぶん、そんなことはないのだろう。学校の職員室に限らず、どこの職場でも、たいてい禁煙になっている。
芝居の稽古場も例外ではない。役者も吸わない人が増えた。けれどエライ作家や演出家が喫煙者である場合は、いまだ稽古場の机に灰皿が用意されるようだ。
むろん、私ごときは外で吸えと、喫煙所を案内される。本来、稽古場は、こうあるべきだと思っている。
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私の母校は甲子園に出たことがない。
その前段階の地区予選では、そこそこいいとこまでいったことがある。
当時写真部に所属していた私は、学校新聞に掲載する写真を撮りに、地区予選会場に行くはずだった。けれど、いろいろ素行に問題があるということで、私だけ、球場に連れていってもらえなかった。
公立のくせに男子校で、チアガールなど当然いない。すると、お隣の、やはり公立の女子校から、「やりましょうか?」と、ありがたい申し出。なのに、校長だか生徒会だか野球部だか応援団だかが、断ってしまったという。
野球の勝ち負けにはまったく関心がないが、これには心底がっかりした覚えがある。
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煙草を吸うと、フィルターを挟む中指と人差し指の腹が、無精髭にじょりっと触れた。鏡で見ると、数本、白いものが混じっており、あぁ、年をとったな、と感じる。
古新聞の回収日、部屋番号を書いて、朝、マンションのエントランスに出しておく決まりなのだが、自分の部屋番号が、一瞬わからなくなった。
単なるど忘れ。
そうは思いつつも、脳細胞が、死滅していってるのではないかと心配になる。
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レンタルビデオ屋でレジに並んでいると、自分がDVDをケースごと持ってきてしまっていることに気づいた。中身のDVDだけを持ってくる決まりなのに。
それで、ケースを棚に戻しに行った。それは5巻セットの1巻なのだが、どこにあったのだったか、わからない。ジャンルからある程度絞り込めるし、他の4巻と似たデザインなのだから、すぐにわかりそうなものなのに、どうしても見つからない。意地になって、くまなく探したのだけど、結局あきらめ、「というわけなので」と、ケースごと、会員証と一緒にレジに出す。
すると、会員証の期限が切れていた。
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近所のうどん屋は、文字通りうどんしか置いてなくて、蕎麦好きの私としては不満だったのだが、最近になって、蕎麦も出すようになった。
早速、天ぷら蕎麦を食してみた。
薄く澄んだだし汁に、ほんのりゆずの香り。
昔はこの「関西風」がダメだった。北関東に生まれ育ち、漬け物に味の素と醤油をかける塩分過多の食生活が染みついている身としては、蕎麦の汁は黒くなければいけなかった。
それが変わった。今はむしろ「関西風」を好む。けれど、故郷に帰るとやっぱり、漬け物には味の素と醤油をかける。
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24時間営業のスーパーで、深夜(というか、早朝)、買い物していたら、頭上を何かが通り過ぎた。
「おや?」と目を上げる。そうしてその正体を認め、「なんだ、カラスか」と買い物の続きをしようとして、「…え?」と再び顔を上げた。
店内のあちこちで悲鳴が上がった。カラスは四角い店内を丸く飛んでいる。入口付近の野菜コーナーから奥の魚コーナー、肉コーナー、総菜コーナー。
そしてまた、こちらめがけてやってきた。
私がとっさにしゃがむ。巨大な羽音が通り過ぎる。手を伸ばせば確実にその黒い羽に触れただろう。買い物カゴをその場に置いて逃げようかと思ったとき、カラスの方が、天井付近の窓から逃げた。
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通りを一本奥に入ったところに、いかにもって感じのラーメン屋があった。
店内は予想通りの「昭和」のおもむき。カウンターの他に、脚がパイプのテーブルが三つ、メニューの紙を貼った黄ばんだ壁に、くっつけて置かれてある。テーブルの天板の裏にしつらえてあるパイプの棚には、たくさんの週刊誌やマンガ雑誌。初老の先客が、ぶりの照り焼きを肴に、焼酎のお湯割り(グラスの底には、割り箸でつぶした梅干し)を飲みながらテレビを見、すぐ隣のカウンター席で、店主がスポーツ新聞をひろげていた。
店は夫婦で切り盛りしているらしく、私が入口近くの席に座ろうとすると、奥さんと思われる、おばちゃん、というか、おばあちゃんが、「こっち座んな。こっちのが、テレビよく見えるから」と、べつのテーブルの椅子を引く。
そのテレビが、チャンネルをガチャガチャ回すタイプのやつじゃなくて、小さいながらも薄型フラットテレビで、なるほどリアルはこういう細部に宿る。
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子供の頃、私が熱を出すといつも、母が自分の額と我が子の額をごっつんこして、「あら、この子、熱があるんじゃない?」と水銀の体温計を持ってきた。
なので、私はずっと、体温計というものは、熱を下げる効果があるのだと思っていた。
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ダメ親父の紋切り型に、給料をもらったその日に使い込んでしまうというのがあるけれど、銀行振込になってからそれができなくなったというのも、よく言われる話。
金を落とす先は、たいてい飲み屋と決まっていて、なぜ飲み屋かといえば、後にモノが残って、それを見るたび後悔するのは避けたいと、そんなとこだけは冷静に意識が働くのだろう。
マンションの役員をしている関係で、管理組合による買い物の立替をした。カードで支払い、領収書を管理会社に渡して精算をお願いしておいたら、優秀な担当者によって迅速に処理され、引き落としのされるはるか前に現金を持ってこられてしまった。
私は一時的にちょっと金持ち。
するといろいろ買いたい物が思い出されて、しかしもちろん、これから必ず引き落としがされるわけで、今、散財すれば、近い将来ひどい目に遭うことはわかりきっている。だが、ダメ親父のダメたるゆえんは、わかっちゃいるけどやめられないところにあり、私は今、ダメかどうかが試されている。
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出かける際に、何気なくマンションのゴミ置き場に目をやると、先週私の出した粗大ゴミが、回収されずに残っている。
以前は逆に、こんなことがあった。
「粗大ゴミを回収しに行ったが、モノが見つけられなかった」と、市の環境局から電話。それでゴミ置き場を確認しに行ったが、モノはちゃんとなくなっている。おそらく市の職員が回収する前に、誰かが持っていってしまったんだろう。
今回、そんな電話はなかったから、完全に回収済みと思いこんでいた。その後も一般ゴミは出し続けていたのに、物陰に押しやられていたのか、今日までまったく気づかなかった。そういえば最近、業者が植栽の刈り込みをした際のゴミが大量に出されていたから、その下敷きにでもなっていたのかもしれない。と、こうして書きながらだと推測もできるけれど、その場では、なんだか一瞬タイムスリップでもしたような、キツネにつままれたような気持ちで立ち尽くしてしまった。
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春先、土手を歩いてて、見つけた花。
「スノーフレーク」(別名、スズランスイセン)という、ヒガンバナ科の花らしい。
花言葉が「純潔、美、無垢な心」。
こう書いていて、なんだか「花の子ルンルン」を思い出してしまった。
ウィキペディアによれば、「ルンルンという言葉は製作者が「50音表を見て響きの良い言葉を選んだ」と語るように、この番組で初めて使われたが、その後明るい気分を表す擬態語として一般化され、1980年代初頭に林真理子の『ルンルンを買っておうちに帰ろう』によって若い女性の間で流行語となった。」とのこと。
「ルンルン気分」なんて、よくできた言葉だと思うんだけど、いつのまにかすっかり死語になってしまった。
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ネットで買った古本の裏表紙に、前の持ち主の住所と名前が書かれてあった。
実名は伏せてNさんとしておくが、その住所が「東京都赤坂区」となっていた。
赤坂が23区制で港区になったのが1947年(昭和22年)だというから、少なくとも私の生まれる二十年以上も前に、Nさんはこの本を読んでいたのだ。なんだかすごい。ちなみに、昭和22年といえば、日本国憲法が施行された年である。
で、栞代わりに、ページに挟まれていた名刺には、またべつの人の名前と会社名があるのだが、こちらの住所は「東京市蒲田区」で、調べてみたら、府・市制が廃止され、東京都が誕生したのが、1943年(昭和18年)だという。東京で「大東亜会議」が開催された年でもある。
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