向うまかせ
作者が戯曲を書いている以上、作品の登場人物が、作者とまったく無関係というわけにはいかないものの、登場人物が作者の分身となって、作者の考えを代弁する芝居を見せられると、心底つまらないと私は感じる。
だいたい「創作」というものは、作者にとって、そんなに都合のいいもんじゃないだろうと思う。
泉鏡花はこう言った。
「最初は、或る材料と事件がとが、ふとした導火線によつて連絡(つなが)れて、好い工合に調和したといふことが動機になつて書き初めても、途中でどうかすると意外な方面に向かつて進むことが有るのです。然し、私は書く時にこれといふ用意は有りませんが、茲に、一つの私の態度ともいふべきことは、筆を執つていよいよ書き初めてからは、一切向うまかせにするといふことです。」
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