身体図式と車両感覚
■ 身体図式とは
**身体図式(body schema)**とは、自分の身体の大きさ・形・位置・動きなどを無意識のうちに把握している感覚的・運動的な枠組みを指します。
これは視覚・触覚・固有感覚(筋肉・関節からの感覚)などから形成され、
「自分の手はどこにあるか」
「足をどのくらい動かせば階段を上れるか」
といった動作をスムーズに行うための内部モデルのようなものです。
■ 車両感覚とは
車両感覚(vehicle sense)とは、車を運転する際に、車体の大きさ・幅・長さ・位置関係をあたかも自分の身体の一部のように感じ取る感覚のことです。
たとえば、
狭い路地をバックで通るときに「あと5cmでぶつかる」と直感的にわかる
ハンドルを切るときに「タイヤの軌跡」が自然にイメージできる
といった現象がこれに当たります。
■ 両者の関係:身体図式の拡張
車両感覚は、身体図式が外部対象(=車)に拡張された状態と考えられます。
研究によると、人は道具や機械を繰り返し使うことで、その外部物体を身体図式に取り込むことができます。
たとえば:
杖を使っている人は、杖の先端までが「自分の身体」として感じられるようになる
テニスプレイヤーは、ラケットの長さや反発を身体感覚として統合している
車の運転者は、車体の外縁までを「自己の延長」として感じるようになる
つまり、運転経験が積み重なると、**「身体図式 → 車体を含む拡張身体図式」**へと再構築されるのです。
■ 神経心理学的裏づけ
脳内では、身体図式を司る領域(主に頭頂葉後部・運動前野)が、
工具や車などの外部物体を扱う際にも活動することが確認されています。
たとえば、fMRI研究では、
熟練ドライバーが運転シミュレーションをしているとき、身体図式関連領域の活動が高まる
車体の幅を誤認しない人ほど、この領域の統合が強い
といった結果が報告されています。
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