散文
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文章形式の一つ。形式的には,韻律をもたない点で韻文と対比される。主として簡明で理性ないし事実に即した内容をもち,この点で詩と対比されるが,詩的内容をもった散文もあるので,両者の区別は必ずしも明確でない。修辞よりも意味が重視され,文法的な正確さが要求される。したがって通常の会話は散文とはいえない。ギリシアでもローマでも,散文は歴史,地誌,哲学など主として非純文学的な内容をもつものに用いられた。ギリシアではヘロドトス,ツキジデス,プラトン,アリストテレス,ローマではキケロ,カエサル,リウィウスなどが代表的散文家である。イギリスやフランスでは散文はまず法律文書に用いられ,次いで年代記,旅行記,さらに聖書の翻訳や説教書などにも用いられるようになった。ルネサンス期に入ると,文学にも使われはじめ,ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』,T.モアの『ユートピア』などの作品が現れた。劇はもとは韻文で書かれるのを原則とし,散文は下層階級の人物,道化,狂人など,通常の規範からはずれた人物のせりふに限られていたが,18世紀以後,まず喜劇が,次いで悲劇が,散文のみで書かれることが多くなった。一方,散文による文学論やエッセーなどの形式も 17世紀から盛んになり,モンテーニュらがすぐれた作品を残した。しかし,散文と最も密接に結びついた文学形式は,18世紀以後に急激に発展した小説である。現代では詩の多くが韻文で書かれているのを除けば,内容が文学的であるか否かを問わず,あらゆる文章表現は散文の形をとるのが通例である。
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