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2019年5月13日 (月)

あるホテルで見た、九階の客室の窓

 

ある時、あるホテルで見た、九階の客室の窓がふと私の心に浮んだ。

 

上記は川端康成『片腕』にある一文である。「見た」は文法的に分解すれば「見る」の連用形+助動詞「た」の連体形だろう。すぐ後に続く「九階」もかかると読まれることを拒むために「、」が打たれているのだ。しかしそれによって「た」が連体形であることまでも打ち消されはしないから、修飾する先が一旦保留の状態に置かれるのだ。そうして文末まで読み進めた後に遡って修飾/被修飾の関係が確定されるのだ。

こんなケースはそう珍しくもない。「川端」の権威によって正当化されるのではないのだ。連体形の後に読点を打つのは「間違い」と機械的に決めつける者があるが、マークシート的思考停止であり、それこそが「間違い」なのである。その程度の認識もなく専門家気取りなど片腹痛い。

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