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2018年12月11日 (火)

拡張する身体


確定した「人間本来の身体」像を遺伝子の中に求めることは難しそ
うである。しかしたとえそうであっても、我々は日ごろ、自分の身体についての何がしか
の所有感を持っている。たとえ私の身体のあり方は、客観的には環境に応じて大きく変わ
り行くものだったとしても、それは私にとっては常に変わらず安定した一つの対象であり
続けるように感じられる。この主観的な所有感のもとになっていると考えられているのが、 身体図式(body schema)といわれる、脳内の身体表象である。 身体図式は、頭頂葉、運動前野腹側部、体性感覚皮質、島皮質などを含む広範な神経回 路網によってコードされると考えられている(Homes & Spence 2004, Berlucchi & Aglioti  1997)。とりわけ重要なのは頭頂葉であり、この領域への障害は自己の身体感覚を大きく変 えることが分かっている。たとえば身体失認の患者は、自分の身体の特定部位、例えば左
腕が相変わらずもとの位置についているにも関わらず、それが自分の腕であることを否定 したり、あるいはそれが誰か他の人の腕であると主張したりする(Graziano & Botvinick 2002)。また同様の部位を損傷することにより、過剰肢(身体部分が実際よりも多くあると 感じる)が生じるという報告もある。驚くべきことにこの患者は、あたかも腕や足が 3本 以上あるかのように、自分の肢の数を多く見積もるのである(Halligan et al. 1993, Sellal et al. 1996)。 以上の脳領域は、どのように身体表象をコード化しているのだろうか。これらの部位に
は、体性感覚や視覚などの複数の感覚情報に反応するバイモーダルニューロンが存在する。
これらのニューロンは特定の受容野を有しており、一定の空間内の刺激に応じて発火する
のであるが、この受容野の範囲が異なった感覚のモードを通じて共通しているのである。
例えば、右手の触覚に反応するバイモーダルニューロンは、右手周辺からの視覚刺激に良
く反応する。現在では、身体部位近傍からの複数の感覚刺激を統合するこうしたニューロ ンが、身体図式の基盤になっていると考えられている(Maravita et al. 2003)。 脳内の多くのニューロンが可塑性を有しているように、これらのニューロンも、環境と
経験による再編を受けている。実際、成長過程において、身体図式は身体の拡大にともな
って広がらなければならないだろう。しかしこうした身体感覚の変更は、もっと短期的な
間にも起こりうる。つまり我々の身体は、その主観的側面においても、確定された不変的 なものなのではなく、経験によって様々に変化しうるものなのである。 身体図式の柔軟性を示すものとして注目されているのが、道具の使用である。入來らは、 ニホンザルを用いた実験で、道具の使用が身体図式を変えることを示した(Iriki et al. 1996,  Maravita & Iriki 2004, 入來 2004)。この実験では、道具を使用していないときと使用してい るときで、サルの身体図式をコードするバイモーダルニューロンがどのような受容野を持
つかが調べられた。その結果、道具を使用しているときは、本来手の近傍のみに反応して
いたバイモーダルニューロンの受容野が、道具の先端を含むように広がることが分かった。
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