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2017年5月23日 (火)

コノテーション

「閉じた先に開く」という言い方をときどき私はする。
どういうことか?
「閉じる」というのは集団内のコノテーションを密にすること。「開く」というのは、それがデノテーション化すること。   

話を小劇場演劇に限定しましょうか。
90年代まで、役者が客席におしりを向けてぼそぼそ喋り続ける演技のデノテーションは、日本の「演劇の辞書」に存在しなかった。演劇というのは役者が客席に顔を向けて大きな声で話すもの。
しかしそれってどうなの? という疑問は私が学生演劇をやってた大昔からあったんです。その疑問に自らこたえる形で「客席におしりを向けてぼそぼそ喋り続ける」コノテーションの芝居を作ってみせる集団が90年代にぽつぽつあらわれた。
これがいわゆる「静かな演劇」ってやつです。こういうのが一時期、あちこちの劇場でわーっとやられたんです。
そうして日本の現代演劇でデノテーション化したんですよ。

そう考えると「閉じた先に開く」って「通俗化することを目指して、通俗化を拒む」あるいは「通俗化を拒むことによって通俗化を目指す」ともいえそうです。
矛盾している。
けれど、この矛盾を矛盾のまま引き受ける必要があるんだろうと思います。おそらく表現の価値(面白さ)は、開いた結果よりむしろその過程、「閉じる→開く」の運動にこそある。

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