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2017年5月24日 (水)

太田省吾の世界

DVD、disc4枚。『小町風伝』『水の駅』『更地』『砂の駅』『エレメント』『聞こえる、あなた?―fuga#3』と特典映像を収録。
 
観るたびに発見があり、面白い。たとえばタルコフスキーの映画を観るような、あるいはロブ=グリエの小説を読むような。心地よくて、うっかりすると寝てしまう芝居ではあるけれども、夢と舞台が溶け合うのも、それはそれで悪くない。
 
特典映像のインタビューの中で、コクトーがサティの音楽を「タコじゃない音楽」と評した話が出てくる。それまでの音楽というのは、タコの足で観客を絡め取るようなものであったが、サティの場合はそれと違う、という。

要するにアンチロマン的傾向の指摘だろう。太田省吾の演劇もその意味で「タコじゃない=非タコ」であるというインタビュアーの指摘はまったくその通りだ。
しかし太田は、同じく「非タコ」的傾向を持つ「静かな演劇」(という呼称も、もはや死語だが)を、自身の作風との共通性を認めながらも批判的に語る。つまり、日常性の枠組みから「跳べない」というミニマリズム的限界に対する批判である。
 
しかしその「限界」を超えるべく、太田以降の多くの劇作家により、さまざまな方法が試され、それなりに成果を上げてきた。少なくとも私はそう思っている。マジックリアリズム的手法の導入や、アングラとの接合、等々。90年代に若い演劇人によってやたらやられた日常のスケッチみたいな作風は、今となってはむしろ少数派だ。

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