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2017年5月25日 (木)

悪党

県下有数の「悪い」中学を卒業した。
しょっちゅう教室の窓が割られ、廊下をバイクが走りまわった。いつも不良グループが便所にたむろしてるので、休み時間に小便に行くのもままならない。自転車置き場じゃ理不尽なリンチが日常茶飯事。次に誰がその標的となるのか、法則性がまるでわからない。
 
ある日、体育の授業で教室をあけたら、私の財布が盗まれた。
担任の先生に被害を届け出ようとしたら、廊下で、クラスメイトが手招きした。
「××くんが呼んでる」
「俺を?」
××とは、不良グループの中でもトップクラスの「身分」の男だ。
クラスメイトは私を屋上に案内した。ああ、ついに私が「標的」となる番がやってきたのだ。××は幾人かのツカイッパをはべらせて、うんこ座りで待っていた。ぶっといズボンに妙に丈の短い学ラン。額には深いソリコミ。片手に煙草、片手に私の財布を持って。
「この財布、キミのでしょう?」
「あ」
「ホントは先に言わなきゃいけなかったんだけど、教室にいなかったもんだから。それで黙ってお金、借りちゃった」
「…」
「悪いけど、もうしばらく貸しといてくれないかなあ?」
甘えるような口調で言うのだった。
「で、いつ、返してくれんの?」
と聞き返すほど、私も空気の読めない男じゃない。一刻も早くその場から立ち去りたい。「わかった」と言って空の財布を受け取り、私は教室に戻った。

金は盗まれたのではない。貸したのだ!
こうして私は届け出るべき「被害」を失ったのである。
なるほど、悪党というものは、こういう巧妙なやり方をするのか、と子供心に感心したものだ。
むろん、その後、金が返されることはなかった。

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