石平『私はなぜ「中国」を捨てたのか 』
原文を極力活かし、一部を会話形式で要約する。
石平(=小平)氏が甥に小遣いをやろうとする。
「要らない」
「何だよ、おまえはお金が嫌なのか(と、からかう)」
「いや、違う。だって小平おじさんのお金は、日本人からもらった給料だろう。そんな金、僕は要らない!」
「……」
「小平おじさん、もしね、今度日本がもう一度中国に侵略してきたら、小平おじさんはどうする。帰ってくるの?」
「(冗談半分で)じゃ、日本が攻めてきたら、お前はどうするんだ?」
「僕は戦う。最前線へ行く。小日本を徹底的にやっつけるのだ。実は僕、大学で入党申請書を出した。来年には党に入れるよ」
「……そうか、お前は共産党が好きなのか」
「当然だろう。中国人なら皆、中国共産党が好きじゃないか。党を擁護しているじゃないか。小平おじさんはそうじゃないのか」
「どうして? どうして中国人は皆、共産党のことを好かなければならないのか。共産党はそんなによいものか」
「当たり前だ。当たり前じゃないか。共産党の指導があるから、中国は日本の侵略を防げるんじゃないか。昔、日本侵略軍をやっつけたのは共産党じゃないか。小平おじさんは歴史を忘れたのか」
「そうか。やっぱり歴史か。それでは聞く。今から十一年前、北京で起きた『六・四事件(=天安門事件)』、あれも歴史だけど、君はどう思うのか」
「何ですかそれは。『六・四事件』って、あ、あれですか。思い出した。じゃあはっきりと言います。小平おじさんたちのやっていたことは、間違っています。党と政府の措置は正しかったと思います。僕だけじゃない。大学では皆、そう思っています」
「正しかった?! 丸腰の学生たちを虐殺していったいどこが正しかったのか。政府が罪のない人を銃殺するのは正しいというのか、キミは(と、声を荒らげる)」
「そうだ。正しかった。おじさんたちのやっていたことは、外国勢力の陰謀じゃないか。鎮圧してどこが悪いのだ。殺人といえばね、小平おじさんの居るところ、日本人こそ殺人者じゃないか。南京大虐殺をやったじゃないか、何千万人の中国人を殺したじゃないか。小平おじさんはもう忘れたようだが、僕は忘れませんよ」
この甥の言い分が、つまり中国共産党の言う「歴史を直視する」ってやつだ。この甥は今、30代半ばから後半くらいか。中国のエリート青年が、かように「歴史を直視」しているわけだ。仮に共産党の一党独裁が崩壊し、仮に民主化が達成されたとしても、コトはそう簡単じゃない。
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