わたなべまさこ『聖ロザリンド』
「嘘をつく人は天国へ行けません」
“純粋”な子供には、社交辞令も、言葉の綾も通じはしない。8才の少女ロザリンドは“正直”に、次々と殺人を犯していく。無垢がゆえ(というか、「愉快犯」に見えるのだが)の大胆な犯行は、恐ろしくも痛快で、私は思わず笑ってしまったのだけど、子供の頃にこれを読んでトラウマになったという人も多いらしい。
373ぺージと結構な長さ。ストックホルム症候群が、犯人との長い時間の共有を必要とするのと同じ理屈で、この“長さ”も重要。読者は悪魔の行いに眉をひそめつつ、同時にこの少女に惹かれてしまう。ラストシーンではきっと涙を流すことになるだろう。
文庫(ぶんか社)の「あとがき」によれば、作者は当初この作品を『マーガレット』で連載することを考えていたらしいが、「刺激が強すぎる」という理由から、『フレンド』での連載になったとのこと。
なんで『マーガレット』でダメで『フレンド』ならいいのか、私にはぜんぜんわからないのだけど、とにかくいろんな“大人の事情”で、いろんなバーションの本が出版されているらしい。
「連載を読んでいた読者の方からは「幻の前半はどこで読めるのか?」と聞かれることがありますが、文庫で読めます!とお答えできます。」とのこと。
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