地獄への道は善意で舗装されている
『以前に本で読んだ日本への引き揚げ者の逸話を紹介した鶴瓶は「母親が病気で歩けなくなったわが子を、一緒に逃げるほかの人たちの足手まといにならないように『ごめんなー』ゆうて首を絞めたそうです。普通じゃなくなるのが戦争。戦争は絶対にしちゃだめ」と力説した。
その上で、怒りの矛先を安倍政権に転じ「違憲と言う人がこれだけ多いのにもかかわらず、なにをしとんねん」と安保法案の強行採決を批判した。「民主主義で決めるんなら、多い方を取るべきですよ。変な解釈して向こう(戦争)へ行こうとしているんですけど、絶対あかん」と言い切った。 』
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たぶん「いい人」なんだろう。きっと偽善者ですらない。だから選挙結果を軽んじる主張をしながら平気で『民主主義で決めるんなら、多い方を取るべきですよ』などと、トンチンカンなことをいえてしまう。情緒的な「物語」がトンチンカンを正当化してくれると踏んでいる。そういう戦後教育的な甘ったれた思考の風潮に馴れきっている。その態度を「思考停止」と批判すれば、「物語に感動した私」という揺るぎない正しさを備えた人格そのものが否定されたと解釈する。
つまり「言葉」が通じない。
山本七平『「空気」の研究』を思い出す。「戦争」に対する臨在感的把握。この手の「いい人」たちは、自分の「善意」が他人を傷つけたり、ときに殺しもするのだということにまるで想像が及ばないのだろう。恐ろしいことだと思う。
なるほど「地獄への道は善意で舗装されている」。
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