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2015年6月 2日 (火)

石平『私はなぜ「中国」を捨てたのか』

引き続き、石平氏の著作をつらつら読んでる。
2000年に著者が四川省の実家に帰省し、そこで甥と交わした会話。
ちょっと長いので、会話の文言はそのまま、ニュアンスだけ私が若干補足しつつ、以下に抜粋してみる。 

***

石平(=小平)氏が甥に小遣いをやろうとする。
 

「要らない」
「何だよ、おまえはお金が嫌なのか(と、からかう)」
「いや、違う。だって小平おじさんのお金は、日本人からもらった給料だろう。そんな金、僕は要らない!」
「……」
「小平おじさん、もしね、今度日本がもう一度中国に侵略してきたら、小平おじさんはどうする。帰ってくるの?」
「(冗談半分で)じゃ、日本が攻めてきたら、お前はどうするんだ?」
「僕は戦う。最前線へ行く。小日本を徹底的にやっつけるのだ。実は僕、大学で入党申請書を出した。来年には党に入れるよ」
「……そうか、お前は共産党が好きなのか」
「当然だろう。中国人なら皆、中国共産党が好きじゃないか。党を擁護しているじゃないか。小平おじさんはそうじゃないのか」
「どうして? どうして中国人は皆、共産党のことを好かなければならないのか。共産党はそんなによいものか」
「当たり前だ。当たり前じゃないか。共産党の指導があるから、中国は日本の侵略を防げるんじゃないか。昔、日本侵略軍をやっつけたのは共産党じゃないか。小平おじさんは歴史を忘れたのか」
「そうか。やっぱり歴史か。それでは聞く。今から十一年前、北京で起きた『六・四事件(=天安門事件)』、あれも歴史だけど、君はどう思うのか」
「何ですかそれは。『六・四事件』って、あ、あれですか。思い出した。じゃあはっきりと言います。小平おじさんたちのやっていたことは、間違っています。党と政府の措置は正しかったと思います。僕だけじゃない。大学では皆、そう思っています」
「正しかった?! 丸腰の学生たちを虐殺していったいどこが正しかったのか。政府が罪のない人を銃殺するのは正しいというのか、キミは(と、声を荒らげる)」
「そうだ。正しかった。おじさんたちのやっていたことは、外国勢力の陰謀じゃないか。鎮圧してどこが悪いのだ。殺人といえばね、小平おじさんの居るところ、日本人こそ殺人者じゃないか。南京大虐殺をやったじゃないか、何千万人の中国人を殺したじゃないか。小平おじさんはもう忘れたようだが、僕は忘れませんよ」

***

この甥の言い分が、つまり中国共産党の言う「歴史を直視する」ってやつだ。
日本国内にもこれを積極的に真に受け、反政府活動に利用する頭の悪い自称平和主義者がいる。彼らは閉じたコミュニティ内で互いの善人ぶりを承認しあって気持ちよくなっているようだが、そうした「善人」のマスターベーションが間接的に、あの天安門での「虐殺」の正当化に荷担しているのだと知るべきだ。しかしこの構造が彼らには理解できない。だからバカだというのだ。
ともあれ、この甥は今、30代半ばから後半くらいか。少なからぬ中国のエリート青年が、かように「歴史を直視」しているわけだ。
仮にかの国で共産党の一党独裁が崩壊し、民主化が達成されたとしても、コトはそう簡単じゃないと思う所以だ。

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