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2014年11月 8日 (土)

凶悪

先日、レンタルDVDで映画「凶悪」を見た。
とても面白かったのだけど、なんだか中学時代のことを思い出して暗い気持ちになってしまった。

自慢じゃないが中学時代、私は学力試験で上位10番から落ちたことがない。それもそのはず、全国平均より偏差値が10も低い、県下有数のバカ中学だからだ。
尾崎豊の歌みたいにしょっちゅう教室の窓が割られ、「スクールウォーズ」みたいに廊下をバイクが走りまわった。いつも不良グループが便所にたむろしてるので、休み時間に小便に行くのもままならない。自転車置き場じゃ理不尽なリンチが日常茶飯事。次に誰がその標的となるのか、法則性がまるでわからない。

ある日、体育の授業で教室をあけたら、私の財布が盗まれた。
担任の先生に被害を届け出ようとしたら、廊下で、クラスメイトが手招きした。
「××くんが呼んでる」
「俺を?」
××とは、不良グループの中でもトップクラスの「身分」の男だ。
クラスメイトは私を屋上に案内した。ああ、ついに私が「標的」となる番がやってきたのだ。××は幾人かのツカイッパをはべらせて、うんこ座りで待っていた。ぶっといズボンに妙に丈の短い学ラン。額には深いソリコミ。片手に煙草、片手に私の財布を持って。
「この財布、キミのでしょう?」
「あ」
「ホントは先に言わなきゃいけなかったんだけど、教室にいなかったもんだから。それで黙ってお金、借りちゃった」
「…」
「悪いけど、もうしばらく貸しといてくれないかなあ?」
甘えるような口調で言うのだった。
「で、いつ、返してくれんの?」
と聞き返すほど、私も空気の読めない男じゃない。一刻も早くその場から立ち去りたい。「わかった」と言って空の財布を受け取り、私は教室に戻った。

金は盗まれたのではない。貸したのだ!

こうして私は届け出るべき「被害」を失ったのである。
なるほど、悪党というものは、こういう巧妙なやり方をするのか、と子供心に感心したものだ。
むろん、その後、金が返されることはなかった。
そろそろ利子つけて返してくんねーかな?

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