『リバース・エッジ』岡崎京子
地上げされたまま、手つかずの河原のヤブ。半ば忘れられたその土地で登場人物たちが遭遇する「死体」への、奇妙にズレたリアクションが、この作品全体を貫く世界観だ。
この「世界観」を、一旦了解した読者は、ちょっとイカレた登場人物たちの行動も、とりあえず違和感なく受け入れることができるだろう。
とはいえ、最後まで主人公に感情移入して物語を読み進められるとは限らない。
たとえば終盤のシーン、登場人物の一人・吉川こずえが、主人公・ハルナを横目に言う。
「行こ 山田君 アホはほっとこ」
まさに私の主人公に対する気持ちもそんな感じ。唐突に橋の上で涙されても、なんだかなーとシラケてしまう。
むしろ私は、山田君を慕い、文字通り恋に身を焦がす、田島カンナに共感してしまったよ。
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