安為
夢を見た。
初めての海外旅行で浮かれている妻が、空港職員の男に、こっぴどく叱られている。
空港ロビーで、妻は、しゅんとうつむいてしまった。
私が頭にきて、職員の男に詰め寄ると、男は小馬鹿にしたように、フンと鼻で笑った。それでもう、完全にブチギレて、私は男の胸ぐらをつかみ、拳を振り上げたのだけれど、殴れば自分の方が悪者になってしまう。
ぐっと怒りをこらえ、男の名札に目をやった。「安為」と書かれてある。
安為、安為、安為安為…。
反芻してその名を記憶に刻む。この男、いったいどうしてくれようか。
と、目が覚めて、私は溜息をついた。
なあんだ、どうせ夢なら、安為の野郎をぶん殴っておくんだった。
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