水まわりの工事
台所の蛇口が調子悪くて水道屋を呼んだのだが、部品の取り寄せに一週間かかるという。やれやれ。
最初、郵便受けに投入された磁石式シール記載の番号に電話しようかと思ったのだが、念のため検索をかけてみたら、業務停止命令を食らっている悪徳業者だと判明。あぶないあぶない。
何年か前にこんなことがあったのが思い出される。
マンションの管理会社から依頼を受けた「水まわりの工事」だと偽って、ヘンなリフォーム業者がやってきたのだった。もっともらしく作業服姿で、胸にはご丁寧に「社員証」なんか下げているのだが、会社名は読み取れない。読み取れないようにできているのだ。
今、キャンペーン中で、この近所で風呂の購入者を募っている。購入希望者は既にこのマンション内にも複数いる。まとめ買いすれば安く風呂の交換ができるので、お宅もひとつ、のらないか?
「複数って、たとえば、誰よ?」
「はい?」
「購入希望者が複数いるんだろ? たとえば、誰よ?」
「それは…プライバシーに関することなので教えられませんよ」
「じゃあ、管理会社の名前は?」
「何ですか?」
「このマンションの管理会社の名前だよ。依頼されて来たんだろう?」
「そんなの、自分でご存知なんじゃないんですか?」
「ほらみろ、嘘じゃんか」
「嘘とは?」
「管理会社から依頼なんかされていない」
「されてますよ」
「嘘を言うなよ! 風呂のセールスじゃねえか」
「そうですよ」
「はあ? さっき『水まわりの工事』だって言っただろう?」
「だから、そういう意味で『水まわりの工事』って言ったんですけど?」
ざけんな! つって追い返したら、玄関ポーチに唾を吐いていきやがった!
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