『軽いめまい』金井美恵子
「水道の水を眺めながら何を考えるのでもなく、ぼうっと放心する心地よさと虚しさ」を、作中、主人公の夏美がマンションの台所で感じるのと同じように、この小説の長い長~いセンテンスに翻弄されるうち、我々読者の視線は行間からこぼれ落ち、意識の縁から、記憶の底に沈んだ些細な出来事を覗き込んでいるのだが、ふいに我に返って、再び活字が目に飛び込んできたとき、くらっと“めまい”に似た体験をすることになるのである。
それにしてもなんて素敵なタイトルなんだろう。
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