『貧困旅行記』つげ義春
本書収録の「蒸発旅日記」は、語り部の「私」が、産婦人科の看護婦S子と結婚しようと“一方的”に決めたところからはじめる。
途中、「私」はストリッパーM子に出会う。M子との再会を求めて劇場に行くが、彼女が散歩に出ていて会えず、諦めて「私」がバスに乗ったところで、「日記」は静かなクライマックスを迎える。
このくだりがたまらなく好きだ。
私は去り難くなりバスの後方へ目をやった。と、そこにM子の姿が目に映った。M子は乳母車を押していた。座長の子供の子守をしながら散歩をしているのだった。まぶしく照り返すアスファルトの道をぼんやりした面持ちで、バスの後方に近付いて来た。私は身をかくすように座席に身体を沈め、後髪をふりきるように目を閉じた。バスは発車した。
« 糸井重里さん、福島の桃を買ってツイッターで報告したら反原発派から犯罪者呼ばわりされる・・・ | トップページ | 『東京日記』内田百閒 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「くださる/いただく」問題(2016.06.07)
- 三浦瑠麗『日本に絶望した人のための政治入門』(2015.06.24)
- 石平『私はなぜ「中国」を捨てたのか』(2015.06.02)
- 篠原常一郎著/筆坂秀世監修『いますぐ読みたい 日本共産党の謎』(2015.05.24)
- 『「みんな」のバカ! 無責任になる構造』仲正昌樹(2014.12.16)
« 糸井重里さん、福島の桃を買ってツイッターで報告したら反原発派から犯罪者呼ばわりされる・・・ | トップページ | 『東京日記』内田百閒 »
コメント