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2014年8月22日 (金)

『「空気」の研究』山本七平

簡単にいえば原子力発電について三、四時間かけて正確な情報を提供し、相手の質問にも応じ、相手は完全に納得したはずなのに、相手はそれで態度は変えない。そして、いまの説明を否定するかの如く見える一枚の写真を見せられると、その方に反応してしまうという。(P214)

公害問題が華やかだったとき、「経団連」をデモ隊で囲んで「日本の全工場をとめろ」といった発言に対して、ある経済記者が「一度やらせればいいのさ」と投げやりな態度で言った例にその実感がある。これは、臨在的把握に基づく行為は、その自己の行為がまわりまわって未来に自分にどう響くかを判定できず、今の社会はその判定能力を失っているの意味であろう。(P218)

21世紀の今日においてなお、日本の大衆の間に根深く蔓延る「穢れ」の思想が歪んだ「社会通念」を形成する。非科学的な思い込み=「偏見」が、“勢い”で正当化され、これに水を差すべき客観的論理=「科学」というものが、馬耳東風の大衆の前に沈黙する。
そうして現実に多くの風評被害が引き起こされる様を、我々はこの数年目にしてきた(し、今も目にしている)。
「類は友を及ぶ」のか、「朱に交われば赤くなる」のか、彼らは自分を善と認める者だけを善と認め返し、閉じた「みんな」を形成する。愚か者同士で徒党を組んで、愚かさを濃縮させている。

本書の初版は昭和52年。
いまだ日本国民は、まるでこの臨在的把握=「空気」の支配を克服していない。


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