『ヒミズ』古谷 実
小学校の帰り道、私は路側帯の白線の上だけ歩く、というルールを自分で自分に勝手に課して、家まで帰ろうとしたことがある。しかし途中に車が駐めてあったり、そもそも白線が途切れていたり、しばしばルールの変更を余儀なくされた。
「オジさんは自分で決めた自分に対するルールみたいなモノを何度も破って大人になったのか」
本作の主人公・住田は、知り合ったホームレスの男に問う。「そして今、自分で自分を許せるのか」と。
中学生の住田は、白線の上を行くことにこだわりすぎた。
それがもともと根拠のない、馬鹿げたことだという自覚はあるのだが、すでにその他の選択肢は捨ててしまった。
必然的に辿り着くのは悲惨な結末。悲惨ではあるのだが、私には、なぜか妙に清々しくも感じられた。
最近のコメント