『きょうのできごと』柴崎友香
もうちょっと「毒」が欲しいとも思うけど、ヘンに露悪的なものより、この清々しさは遙かにいいし、人物造形や会話はとても巧い。
けど、それだけの理由で、この“何も起こらない”物語を、私は最後まで退屈せずに読み通せてしまったのだろうか?
巻末の、保坂和志の「解説」で合点がいった。
ワンセンテンスごとに見たり感じたりする対象が変わり、自分の気持ちもそれにつられて変わっていく―という、このとても機敏な動きの連続は、一見日常そのままのようでいて、本当のところ現実の心や近くの動きよりはるかに活発に構成されている。
これは芝居づくりにも大いに参考になる。とくに私のような作風の会話劇の作り手にとっては。
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