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2012年4月14日 (土)

『麒麟館グラフィティー』吉村明美

大学4年間を札幌で過ごした私にとっては、作中に描かれる風景がまず懐かしい。
しかし登場人物の、とくに“悪い男”の造形が類型的すぎたり、物語の展開がご都合主義だったりと、気になるところは少なくない。
それでも、男勝りな「妙」のキャラクターは魅力的に描かれていると思うし、全巻読み通してみれば、ハッピーエンドを素直に喜べた。
 
ただ―これは作品とは直接関係ないけれども―文庫の各巻末にはエッセイがついていて、1巻で、なんとかという大学教員が、こうケチをつけている。

作品中に出てくる離婚届けの記載事項や手続きについては詳細だが、そのわりには制度に対しての批判力が弱い。宇佐美菊子は、第六二話で火野菊子と紹介される。婚姻届けを出し、再び火野美棹を戸籍筆頭者とする家の妻となり、夫の姓にしたのだ。作者は菊子と火野の愛の成就を、火野菊子と表現した。作者は、秀次が菊子に要求した「妻」は、婚姻制度がうみだす男性支配の構図であると充分気付いていたのではなかったのか。

いかにも浅薄なフェミニスト。ここまで的外れでバカ丸出しの文章を、わざわざ収録する必要があったのだろうか?

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