夢を見た⑧
過去に失礼なことをされて、現実にはもう二度と会うこともないだろう昔の知り合いと、夢の中で会う。
どうやら札幌であるらしい。
町を歩きながら、ここのビルには誰それが勤めている、などという相手の話に、「へえ、そうなんだあ」と、興味もないのに努めてにこやかに相づちを打つ私。
そのとき通りすがりの他人が、知り合いの逆鱗に触れるような政治的な話をしているのが聞こえてきたので、私は咄嗟に「そういえば、こないだ、自転車で函館まで行っちゃってさあ」と、どうでもいい別の話題を振った。
「着いたと思ったら、すぐ帰らなきゃいけなくて、五稜郭とか見れなかったよ」
「へえ」
「やっぱ、電車で行くべきだったね」
「なにで行ったの?」
「だから、自転車だってばあ」と、私はおどけながらも腹の中で舌打ちしている。こいつホントひとの話聞いてねえな、相変わらず失礼なやつだ、と。
目が覚めて、函館なんて一度も行ったことがないことに気づいた。
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